メガストアの松島詩史インタビュー感想に見せかけた、猫撫に対する期待を綴る文章

そういえばメガストア2011年4月号の発売日は今日でしたね、ということ簡単にインタビューの感想を。
特集記事の他のページはこの日記を見ている奇特な方々にとっては今更な話なので割愛。


今回のインタビューで注目すべきは3点だと思います。
まず1つはゲームという媒体の、制作における様々な制約を可能な限り取り払い、クリエイターそれぞれに期待されている想定範囲を超えたクオリティを目指している点。
そして次に、「家族」というテーマは松島Pから提示されているという点。
最後に、シナリオ制作にあたり、まずはシナリオライターへシステムを提示し、自由に配置可能なメッセージフレームを活かした形で執筆してもらっている、という点。


これまで元長柾木の作品をプレイしてきた印象としての話なのですが。
元長柾木が主導した企画よりは、持ち味を理解した人間が企画を提示し、手綱を握った方が広く受け容れられやすいものができるのでは、という印象がありまして。
プリンセスブライドにしても、本人執筆部分は特徴が色濃く残されていた割に導入部分は非常にキャッチーなものでありましたし。*1
猫撫ディストーションは、松島詩史が元長柾木を巧く調理できる存在であると電妄トークライブの時に確信しましたが、今回のインタビューでもその片鱗は伝わってくるのではないかと思います。
最終的な判断は本編をプレイしてからになるでしょうけれど。


また、猫撫における、自由なメッセージウィンドウ位置によるシステムは今回の大きな注目点のひとつでしょう。
シナリオライターが大きく注目されている作品ではありますが、ADVにおけるテキスト表現についても注目すべき作品だと強く確信しているのです。*2
テキストADVにおけるメッセージウィンドウの表現方法については基本フォーマットが固まっている感がありますが、敢えてその点を意識的にアピールするブランドはまだまだ少ないのではないかと。*3
先日話題になったspring efemeralさんの「WHITESOFT「猫撫ディストーション」で確認したいこと」でも示された通りです。
http://d.hatena.ne.jp/efemeral/20110211
この記事でも引用されている内容ではあるが、改めてもう一度示しましょう。

美少女ゲームのゲーム性は、テキストの芸は、スクリプティングの芸はまだ極められていない。筆者もまだその裾野にいるに過ぎない。これからアタックをかけようという段階だ。攻略すべきポイントは無数にある。テキスト自体の洗練。視点の実験。欲望の王国の追求。演劇との類縁性の模索。パラレルな伏線構築。どこから手をつけたらいいか途方に暮れるくらいだ。

美少女ゲームの臨界点」における元長柾木本人の論考「回想――祭りが始まり、時代が終わった」にて整理された”技術的側面から見た美少女ゲームの本質”を出発点とする、広大な地平と言えるのではないでしょうか。
電撃姫2011年3月号での元長柾木インタビューでも小説とゲームのテキストの違いに答えていますが*4、もしかすると物語の主題以上に注目すべきところなのかもしれません。

*1:物足りないという意見も同時に理解できるのですが、受け皿の広さも価値のひとつだという認識なのです

*2:これまでも位置が変化するメッセージウィンドウを実装したシステムは存在しているとの指摘を各所で見かけましたが、システムとして存在していることと、それを活かすことはまったくの別物だと言っておきたいところです。

*3:そりゃぁ普通に作った方が簡単だから、というのは当たり前の話であって

*4:まだ発売中なので引用は控えますが