『星海大戦』序章 加筆修正部分一覧

えー、ひとまず序章だけです。
久々の単行本発売ということもあって、どのような点を加筆・修正したか纏めてみようと思い立ったものの、序章だけでも相当な時間を取られる始末。


しかも、粗探しをしているような気分になるといいますか、時が経つにつれて不毛なことをしているんじゃなかろうかという疑念が強くなっていくのです。


もしかすると両者の差異から何かしらを見出すことができるかもしれない、その程度のものかもしれません。


それでもきりの良いところまでは終わらせようと思い、序章分をひとまずアップすることにしました。
たとえ一挙に載せるにしても長いですしね。


作業の続きについては他にもやるべきことが積み上がっているため、未定です。
需要があればやる気も少しはアップするかもしれません(笑)
第一回の途中までにも関わらず非常に長いので、次回があるなら掲載回ごとに記事を作ることになるかと。


長いため格納します。
活用する方がいるのかはわかりませんが、それではどうぞ。




※数字の表記は最前線連載版は横書きなのでアラビア数字、書籍版は縦書きなので漢数字表記となっていますが、ここでは横書きのためアラビア数字表記に統一しています。

p.11,l.12(追加)
――以降の人類は紀年法のはてしない相剋の歴史から解放されるだろうという祈念のもとに。

p.12,l.11
所属する職員が個人としてどのようなことを感じていたかはともかく、

所属する職員が個人としてどのような感情をいだいていたかはともかく、

p.13,l.10
かれらが支配欲求にもとづいて行動して判断を誤ることは、ほとんどなかったといっていい。人間が運営する組織としては奇跡的といえたが、

人間が運営する組織としては奇跡的なことに、かれらが支配欲求にもとづいて行動して判断を誤ることは、ほとんどなかったといっていい。

p.14,l.02
21世紀前半は途上国支援を主たる業務としていたWBTFだが、世紀後半に入る頃には新たな業務を見つける必要に迫られた。

そのように21世紀前半は途上国支援を主たる業務としていたWBTFだが、世紀後半に入る頃には新たな業務を見つける必要に迫られた。

p.14,l.05
地球上から途上国がなくなることは、かれらにとってゴールではない。
21世紀前半を通じて巨大化し世界経済の第一の担(にな)い手にまでなったWBTFには、つねに開発を行わなければならない責務があった。

地球上から途上国が存在しなくなることは、彼らにとってゴールではなかった。
21世紀前半をつうじて巨大化し世界経済の第一の担(にな)い手にまでなったWBTFには、高い水準で世界経済を維持する責務があった。すくなくとも、彼らはそう自任していた。ノルドシュトルムの断言に象徴される強烈なエリート意識が、彼らにそんな義務感をいだかせたのである。
経済を維持するためには、成長しつづけなければならない。成長するためにはたえまなく開発を行わなければならなかった。

p.15,l.01
かれらにとって満足できる規模のものだった。

彼らにとって申し分のない規模のものだった。

p.15,l.08
強化医療とは、治療や予防を目的とする通常の医療とは違い生物工学やナノ技術によって肉体を「改造」し身体機能強化や長命化を図る医療の総称だが、この技術によって人間はそれまでより苛酷(かこく)な環境に適応できるようになった。つまりテラフォーミングの目標水準を大幅に下げることが可能になり、工期を数十年にまで一気に短縮した。

強化医療とは、治療や予防を目的とする通常の医療とは違い、生物工学やナノ技術によって肉体を「改造」し身体機能強化や長命化を図る医療の総称である。この技術によって、人間はそれまでより苛酷(かこく)な環境に適応できるようになった。つまり環境改変の目標水準が大幅に下がり、工期を数十年にまで一気に短縮することが可能になったのである。

p.15,l.13
人口増加率が再びプラスに転じはじめ、

人口増加率がふたたびプラスに転じはじめ、

p.15,l.17
こういった技術的・社会的変化が重なったことにより、ついにWBTFによる火星テラフォーミングの実行が承認された。それでも多くの反対意見があったが、強引な決議でそれを押し切った。

こういった技術的・社会的変化が重なったことにより、ついにWBTF総会において火星テラフォーミングの実行が承認された。それでも多くの反対意見があったが、金銭による買収工作にとどまらず委員の家族に対する恫喝行為まであったとされる強引な決議でそれを押し切った。

p.16,l.09
2000年という時間的遠距離を隔てた過去に生きた人物によって書かれた空想的遠距離への紀行文は、彼の精神をとらえるに充分な熱量を備えていた。

それはいわば、2000年という時間的遠距離を隔てた過去に生きた人物によって書かれた、空想的遠距離への紀行文であり、彼の精神をとらえるに充分な熱量を備えていた。

p.18,l.14
つまりセドナにいれば自動的に、生まれ育った場所から「遠く」に行けるというわけだった。

つまりセドナにいれば自動的に、生まれ育った太陽系中心部から「遠く」に行けるというわけだった。

p.19,l.09
厳格な条件ゆえに再現性が低かったことと、発表と前後してブランチャードがぼろをまとったような出で立ちで場をわきまえない奇異な言動を繰り返すようになったこともあって、当初その論は広く受け入れられなかった。

厳格な条件ゆえに再現性が低かったことと、発表と前後してブランチャードが奇異な言動を繰り返すようになったこともあって、当初その論は広く受け入れられなかった。

p.19,l.13
彼は、自らの理論を信じてほしくなかったからこそ、あえて胡乱(うろん)な行動をとっていたようなのである。

彼は、自らの理論を[信じてほしくなかった](強調点)からこそ、あえて胡乱(うろん)な行動をとっていたようなのである。

p.19,l.16
研究費を横領して賭博(とばく)につぎ込み、同僚の妻と密通に及んだあげくに別れを切り出されたときにはその事実を大学中に写真つきでばらまき、「量子重力の因果形成理論」は擬似論文であり何らの真理も含まないパロディである、と同論文を投稿したのとは別の雑誌で表明することさえした。

研究費を横領して賭博(とばく)につぎ込み、同僚の妻と密通に及んだあげくに別れを切り出されたときにはその事実を大学中に写真つきでばらまき、ぼろをまとったような出で立ちで学会に出没し、「量子重力の因果形成理論」は擬似論文であり何らの真理も含まないパロディである、と同論文を投稿したのとは別の雑誌で表明することさえした。

p.20,l.04
しかし彼の期待に反して、もろもろの行動によって彼の社会的な生命は絶(た)たれたものの、論文の価値自体が下がることはなかった。

しかし彼の期待に反して、論文の価値自体が下がることはなかった。
もろもろの行動によって彼の社会的な生命は絶たれたが。

p.22,l.06
WBTFの軍事力が抑止力(よくしりょく)となってはたらいたということもあるし、地球よりも格段にデリケートな、テラフォーミングを施された天体環境を破壊するような暴力の行使が自殺行為であることは明白だったのである。
WBTFの軍事力が抑止力(よくしりょく)となってはたらいたということもあるし、地球よりも格段にデリケートな、テラフォーミングを施された天体環境を破壊するような暴力の行使が自殺行為であることは誰の目にも明らかだった。

p.22,l.08
特に地球外においてそれは顕著で、西暦2252年、星海暦制定の年に地球人口の人類全体に占める割合が半分を切ったわけだが、地球人口は過去200年のあいだに85億から95億へと、微増といってもさしつかえない程度にしか増加しなかったのに対して、地球外人口はほぼゼロから95億にまで達したのである。

とくに地球外においてそれは顕著だった。西暦2252年、星海暦制定の年に地球人口の人類全体に占める割合が過半となったわけだが、地球人口は過去200年のあいだに85億から95億へと、微増といってもさしつかえない程度にしか増加しなかったのに対して、地球外人口はほぼゼロから95億にまで達したのである。

p.22,l.15
地球時代からその傾向はあったのだが、この時代それはさらに進行した。

地球時代からあったその傾向は、この時代さらに進行した。

p.23,l.01
人類の、少なくとも富の面での発展のためには民主主義が必須のものではないことが明白となった。

人類の、すくなくとも富の面における発展のためには民主主義が必須ではないことが明白となった。

p.23,l.05
不幸を克服しようとするとき人が求めるものは、不当に富を独占していると思われる人々に対する攻撃と独占された権利の社会全体への解放だったが、それなりに人々が富裕化してしまうと、現状を維持すること、あるいは隣人より豊かで健康的な生活を送ることこそが人々の関心事となったのである。

不幸を克服しようとするとき人が求めるものは、不当に富を独占していると思われる人々に対する攻撃と独占された権利の社会全体への解放だった。しかしそれなりに人々が富裕化してしまうと、現状を維持すること、あるいは隣人より豊かで健康的な生活を送ることこそが人々の関心事となった。

p.23,l.09(追加)
たとえば、エリク・ノルドシュトルムのような。

p.24,l.06
星海暦250年(西暦2314年)には、

星海暦250年(西暦2314年)ころには、

p.24,l.10
……星海暦337年、人類は史上初めて地球外起源の生命体との接触を果たす。
それは宇宙探査の前線においてではなく、地球の近傍(きんぼう)にて起こった。

……そんな平和な時代のさなか、星海暦337年、人類は史上初めて地球外起源の生命体との接触を果たす。
最初は《仲間》、のちには《敵》、中立的にはネオテニュクスと呼ばれることになる存在との接触宇宙探査の前線においてではなく、地球の近傍(きんぼう)にて起こった。

p.24,l.17
個体差があり、またさまざまな人種的特徴が混淆(こんこう)していたためはっきりとどの人種のようであると名指すことはできなかったが、とにかくかれらは人類と酷似(こくじ)していた。

個体差があり、またさまざまな人種的特徴が混淆(こんこう)していたためはっきりとどの人種のようであると形容することはできなかったが、とにかくかれらは人類と酷似(こくじ)していた。

p.25,l.09
自らがどこから来たか、何ものであるのか、そういった属性を抜きにして語り合うことこそが対話というものではないのですか?」などと答えた。

みずからがどこから来たか、何ものであるのか、そういった属性を抜きにして語り合うことこそが対話というものではないのですか?」などと答えた。

p.25,l.12
かれらは特に、西暦20世紀以前の古い時代のものを好んだ。

かれらはとくに、西暦20世紀以前の古い時代のものを好んだ。

p.26,l.10
それでも数多くの人間が《仲間》と歓談の時をもち、そのほぼすべての場合において《仲間》は人類に好感を与えることに成功したのだった。

それでも数多くの人間が《仲間》と歓談の時をもち、またマスメディアにも多く登場し、そのほぼすべての場合において《仲間》は人類に好感を与えることに成功したのだった。

p.27,l.05
人間的価値観を重視する近惑星と技術至上主義的な遠惑星という気質の違いがこの頃には譲歩(じょうほ)困難なほどにかけ離れていたことに加えて、

人間的価値観を重視する近惑星と技術至上主義的な遠惑星という気質の違いがこの頃には譲歩(じょうほ)困難なほどに拡大していたことに加えて、

p.27,l.12
当初はガニメデとタイタンの戦いだったのがすぐに木星圏と土星圏のあいだの戦いとなり、

当初はガニメデとタイタンの戦いだったのがすぐに木星圏と土星圏のの戦いとなり、

p.28,l.14
そのなかで強力なノウアスフィアが人間の精神に重大な悪影響を与えることが明らかになった。

その過程で強力なノウアスフィアが人間の精神に重大な悪影響を与えることが明らかになった。

p.29,l.06
耐性(トレランス)をもってさえいれば、軍人としての適性をほとんど無視して片端から前線に送り込まれた。

耐性(トレランス)の強さの程度を表す数値である寛容階級(トレランスクラス)が高くさえあれば、軍人としての適性をほとんど無視して片端から前線に送り込まれた。

p.29,l.13
結果あっというに戦線は拡大し、

結果あっというに戦線は拡大し、

p.29,l.16
戦略的要衝であるラグランジュ点の奪い合いが延々と続いた。

戦略的要衝であるラグランジュ点の奪い合いがえんえんと続いた。

p.30,l.09(追加)
そのなかでマスメディアによる演出によって、多くのグリーンホーンが、人類史上初の宇宙戦争において覚醒したある種の異能力者として、一般社会で偶像視されるという現象も発生した。

p.30,l.16
そんな《仲間》だったが、戦争開始15年めの星海暦364年、旗幟(きし)を明らかにする。

そんな《仲間》だったが、戦争開始16年めの星海暦364年、旗幟(きし)を明らかにする。

p.31,l.04(追加)
《仲間》は、神話・伝承のたぐいに登場する想像上の生物の形をとって戦った。《仲間》との戦いは、人類のもつすべての記憶の再現、叙事詩的闘争という様相を呈した。

p.31,l.16
何とか《仲間》との休戦に持ち込んだときには、

何とか休戦に持ち込んだときには、

p.32,l.07
協定により、太陽を中心とする球形の2AU圏内は《仲間》の統治するところとなり、人類は足を踏み入れることを禁じられた。

協定により、太陽を中心とする球形の2AU圏内は協定球圏と呼ばれ《仲間》の統治するところとなり、人類は足を踏み入れることを禁じられた。

p.32,l.12
戦争終盤においてすでに一般に使用されていた《敵》という単語が公式に採用された。

戦争終盤においてすでに一般に使用されていた《敵(ファイント)》という単語が公式に採用された。

p.32,l.14
終盤においては共闘したとはいえ、戦争を通じて近惑星と遠惑星の対立は決定的となり、戦争への評価も正反対のものとなった。
木星圏を中心とする近惑星は、土星圏の技術至上主義的非倫理性が惨劇を招いたとして、人間的価値観を重視する意味で紀年法を星海暦から西暦に戻し、それを新たに「人類暦」と名づけた。
一方土星圏を中心とする遠惑星は、木星圏の観念主義的傲慢こそが惨劇の根源だったとして、恣意的な人間性のたぐいよりも宇宙からの恩寵(おんちょう)である生命そのものを重視する意味で、星海暦を維持したままその名を「恩寵暦」と改めた。

終盤においては共闘したとはいえ、戦争を通じて近惑星と遠惑星の対立は決定的となり、それぞれにまったく異なる二つの教訓を導きだした。
「人間を人間扱いしない、土星圏の技術至上主義的非倫理性がこのたびの戦禍を招いた。人間が人間である価値を、もう一度見つめなおさなければならない」
木星圏を中心とする近惑星はそのように戦争を総括して、
紀年法を星海暦から西暦に戻し、それを新たに「人類暦」と名づけた。
木星圏の観念主義的傲慢こそが、惨劇の根源だった。恣意的な人間性などという観念に淫して、彼らは生命を軽視した。われわれは観念ではなく、宇宙からの恩寵(おんちょう)である生命そのものを重視せねばならない」
一方土星圏を中心とする遠惑星は、そう結論して星海暦を維持したままその名を「恩寵暦」と改めた。

p.33,l.12(削除)
「第3次世界大戦」という名称を提案する者もいたが、そもそも何が「第3次」なのかが理解されなかったため支持を得ることはなかった。

p.33,l.14
天体間にわたる国家統合が行われた。

天体間にわたる政治的統合が行われた。

p.33,l.14
この数字は「2AU圏」外のみのものであり、

この数字は協定球圏外のみのものであり、

p.34,l.12
弛緩(しかん)した戦争状態が延々(えんえん)と続いていた。

弛緩(しかん)した戦争状態がえんえんと続いていた。